「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」とテレビCMでしきりに放送されていたときです。大阪の老舗博徒組織の用心棒であった中国人は、シャブ(覚醒剤)禁止の組織の規律の中、覚醒剤に溺れてしまった組織のものやその家族を,ジャブ中から救っていました。その中国人は多くの阿片や麻黄中毒を中国の武当山で救っていたらしいのですが、シャブ中は麻黄茶中毒の治療と同じでとても効果があったそうです。大阪の南のクラブで働く女性が、その中国人に覚醒剤中毒を完治させてもらい、その女性の両親がその中国人に涙を流して感謝をしている姿を、実際に見たことがあります。その女性のことも知っており、幼い子供二人と老舗博徒組織の代貸が紹介した和菓子屋で働き、後にそこの息子の一人と結婚しました。太極拳には覚醒剤中毒を治療できる、そのような技法もちゃんと伝わっています。
「ママー、ママー」と泣き叫ぶ子どもには目もくれず、若い母親が自身の左腕に覚醒剤を注射。母親の無機質な顔面は「廃人」以外に言葉が見つからない。無音のシーンがしばらく続いた最後に「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか……」という抑揚のない低音のナレーションが流れるあのCM。記憶が幾分ゆがめられているかもしれないが、あのCMはだいたいこんな感じだった。これをまだ物心がつかないくらいの年齢時に繰り返し見せられた僕にとって覚醒剤は今も恐怖でしかないのだ。